やかんが怖い

まんじゅうの話しではありません。

「やかん」っていうお噺があるんです。
私が「やかん」を初めて聴いたのは、「立川談志 立川談春 親子会 in 歌舞伎座〜伝承というドキュメンタリー〜」というDVDで立川談志師匠の高座で。

この高座、談志師匠はもう朦朧としながら話してて、師匠お気に入りのジョークのまくらから噺に入る境目が分からなかったけど、ひたすらすごいトンチ炸裂で、私が従来抱いていた落語らしい落語だな。って思った。(その高座の時の談志師匠に対しても色々感じる事があったけどそこは長くなるので割愛。)

物語性はあまりなくて、そこまで好きな噺ではなかったけどYoutubeで「立川談志」って検索するとぼちぼち出てくるので聴いたり。

んで、昨日2012年4月1日に、文化放送開局60周年記念放送があって、志の輔師匠がナビゲーターで2時間の番組をやってたので聴いた。
そこで談志師匠の高座もやるって言うので楽しみにしてたんだけど、放送されたのは「やかん」。談春師匠との親子会といい、60周年の記念放送といい、何でこうも「ここぞ」って時にこのお噺を何度もやるの?人情噺か春の噺が良かったなぁ。って思いながら聴いた。
で、聞きながらなんとなくハッと気がついて怖くなった。談志師匠の「世間はやかん」って本、読んでないけど本屋さんで見たことがある。ご隠居とはっつあんのやりとりをひたすら聞いていると、その意味が何だかじわじわと分かってきた。あたまがどんどん追い込まれるみたいな、でもそれを笑ってる観客と、談志師匠が捲し立て続けるお噺。こわい空気だった。
窮屈で抜けられない世界の事言ってるんだと感じた。談志師匠は何を狙っているのか私の感覚でしか汲み取れないけど、そういう事を言ってるように思ってこわかった。
と、同時に朦朧としながら、自分の限界に挑戦しながら、話し続けたかったお噺だったの?と思うと強くて暖かい気持ちにもなり、「やかん」が怖いけど、きっと大丈夫だ。とも思った。