花見小僧と散歩

4月ももう半ばに差し掛かり、はしゃいで浮かれたお花見の時期もそろそろ落ち着いて来た。
何故か時々寒かったりもするけど、もう当然の様に皆が春の中にいる。

今年の桜も綺麗だったけど、それ以上に今年は落語と出会った事でいつもとは違った方法でお花見を楽しむ事ができた。

散歩のお供に色々と調べた「春のお噺」。これらのお噺の中に出てくる東京(江戸)の色んな場所で営まれている人々の春の生活を見に行くことにした。

まず行きたい!と思ったのは「花見小僧」コース。おせつと徳三郎が小僧とおばさんと一緒にお花見に出かけた向島

「花見の仇討ち」コースも一人散歩には持って来いのなかなかのタフな距離で魅力的ではあったけど、この「花見小僧」では美味しい桜餅が出てくるし、範囲も広過ぎないので、お友達も誘いやすい。これは行くしかない。ってことで浅草からスタート。


浅草から吾妻橋を東に渡るとアサヒビール本社の麓に勝海舟がいた。周りにいた小学校3年生くらいの子供に「松尾芭蕉かなー?」と言わしめるほど風流な春の川べりにいらっしゃいました。松尾芭蕉は刀は持っていなかったと思う!こんにちは。行ってきます。

墨田区側の河川沿いの様子。両岸には提灯と出店が出ている。桜は実は全く咲いていなかった。フライング。でもいいのです。

言問橋の麓から東側にスカイツリーが見える。おせつと徳三郎の頃は、お花見シーズンになるとこの言問橋、一度人の流れに乗ってしまったら最後。後ろからギュウギュウと押し出されて、振り返ってもといた場所に戻るのは至難の業だったとか。今はそんな事ありませんでした。名前の響きが好き。「ことといばし」。

おせつ、徳三郎、小僧とおばさんがお参りに来た三囲神社(みめぐりじんじゃ)。ここでおせつと徳三郎はおやつのたまごを半分こで食べました。

小僧がお使いに出された長命寺の桜餅。肝心の長命寺は幼稚園が併設された小ぢんまりとしたお寺だった。長命寺のちょうど真裏にあるこのお店。


大きな桜の花びらが3枚も貼り付けられている。葉っぱ自体はかなりしょっぱかった。全ての葉っぱを取って食べた方が香りと甘さがちょうど良くて美味しかった。

花より団子。甘いものをはしご。長命寺の前の道路を隔ててすぐお向かいにある言問団子へ。実は「言問橋」や「言問」という地名は、そもそもここのお店から来ているとか。
言問団子の栞に因りますと、在原業平が旅行に来た際に隅田川で見た鴎の別名を「都鳥」と聞いて、都を恋しがって詠んだ句

「名にしおはばいざ言問はん都鳥 我が思ふ人はありやなしやと」

お店の主人がこの句から名前を取って「言問団子」を作り、それが有名になったのでこの辺りは「言問ヶ岡」と呼ばれるようになったとか。

白あんのえんどう豆の味がいい香りでよく濾してあって美味しいかった。まだ少し寒い日だったので湯のみで飲む温かいお茶がありがたかった。都鳥の湯のみ可愛くて丈夫そうだったので売られていたら是非欲しい。

折角なので業平橋方面に歩く。途中道すがら怪しい宗教団体のお寺ツアーに参加させられてお経を読まされたり終始薄ら笑いするハメになったが、なんとかスカイツリーのお膝元業平橋駅(現 とうきょうスカイツリー駅)まで来た。こんな至近距離で見るのは初めて。地面に這いつくばってやっと全貌を撮影できた。でかいー。

結構な距離をウロウロして、業平橋から東武線に乗って浅草へ。

浅草寺に帰ってきました。

「花見小僧」に連れられて、向島のお花見を楽しみました。実は、お花見を楽しんだおせつと徳三郎の二人の恋路の行方は、また別のお噺「刀屋」で語られます。これはこれでまたお花見とは違う展開になるのだけど、二人はこの向島でふわふわとした恋の気持ちを芽生えさせたのかなぁ。と想像すると、この春のお気楽な雰囲気ではそうなってもおかしくないなぁ。と思わされるのでした。いやはや春ですね。

落語の蔵柳家さん喬師匠の「おせつと徳三郎」「刀屋」を売っていました。
柳家さん喬 おせつ徳三郎〜刀屋